2014年12月26日金曜日

クリスマスより

ハッピークリスマス、ばたばたとしていて親しい人たちにもなんの連絡も出来ていないので、その代わりというわけでもないけど、クリスマスの朝にキーボードをたたいています。

5月の半ばにフランスに来てもう年末でなにも出来ないまま約7ヶ月が経ってしまったというのが正直なところで、自分はおいしいワインと食べ物を食べて日々安楽に暮らすだけでは満足出来ない人間なんだということを実感しています。もちろんパン屋をするにあたってはフランスのパン屋で実際に働き、毎日パンを食べて生活しているので、とても良い経験になっているが、いったい何が足りないんだろう。

などということを悶々と考えたりしているので、手紙を出そうにもイマイチ筆が進まず、音信不通でもないけれど、届いたメールも返せず、というような状態です。苦し紛れにインスタグラムに写真をアップしているのでチェックしてみてください。


こちらの風景はやはり美しく、住んでいる田舎の村でも歩いていて立ち止まるようなこともしばしばあって、ここにずっといたいななんて思うこともあるけど、そんなとき同じように思い浮かぶのはけだるい夏の暑い日に縁側にこしかけて吊るしてある風鈴の音を聞くなどといった失われつつある日本人的ノスタルジーです。

帰りたい帰りたくないに関わらずビザは5月でいったん切れるのでヨーロッパのシェンゲン協定加盟国の中にいられるのは5月までで、2月で仕事を辞めることを働いているパン屋には伝えてあり、そのあとはフランスの他の地方やフランス以外のヨーロッパの国々を出来る範囲で見て回れたらなと思っています。旅のテーマとして食べ物というキーワードは大きくあるけれど、その後ろにあるものにもっと敏感に、残りの期間を過ごしていきたいなと思っています。

Joyeux Noël et Bonne Année!




2014年12月9日火曜日

Le Père Noëlのおくりもの

ここのところ2℃、3℃という気温のこの町。
まだまだ雪は見かけませんが色んな人から『今は大丈夫だけど、この先とーーーーっても寒くなるわよ!』と言われるので、今のうちから冬支度をしなくては、と思う日々です。
それでもNoëlのわくわく感につられて、お休みの日にはいそいそと電車の時刻を調べながら口元が自然とほころぶ休日を過ごしています。

さてさて。
そんな寒い寒いフランスの12月のある日、1件のメッセージが入っていました。
大家さんから『Bredeleを一緒に作りませんか』という、とーっても嬉しいお誘いです。
まだ会って間もない頃にフランスで何がしたい?と聞かれ、フランスの家庭のお菓子に興味があった私はジャム作りをしてみたい…と言っていました。
そのことをどこかで気にかけてくださっていて今回のお菓子作りに誘っていただいたのかな、と思い言葉は分からないけれど大きな大きな愛情に感謝の気持ちでいっぱいです。

このBredeleというのは、ここアルザス地方のクリスマスのための焼菓子で今の時期にはパティスリーやMarché de Noël、スーパーマーケットなど色んなところでお目にかかります。
そしてこの時期、アルザスの家庭ではママンが家族のためにつくるのだそうです。

今回は2回にわたって行われたBredele作り。

全部で6種類くらいを作りましたが、Bredeleの種類はとーってもたくさんあるようです。
そしてここは自給率の高いフランス!小麦粉もバターも卵も美味しくて安いので家庭でも気軽につくれるのは本当に素晴らしいとこっそり感心してしまいました。

厳選してこだわり抜いた頑固でストイックなものは、美味しいのだろうけどなんだかその緊張感まで味に染み渡っているようでどこかほっとしない。
でもママンが家族のためにつくるお菓子は、いつもさっくりほっこりして自然と笑顔になってママンを思い出すのです。Noëlの優しい時間を家族で過ごし美味しいBredeleを食べると、ストレスでぎゅうぎゅうに固まった身体が自然とほぐれるようなそんな魔法のお菓子なのかもしれません。
そんな世界でただひとつの魔法のお菓子を一緒に作り、パクッと味見しながらいつまでも思い出しては嬉しくなる時間を頂きました。

Merci beaucoup ! Martine & Daniel.






2014年12月4日木曜日

Nöel

10月の下旬にサマータイムも終わり、慣れない時計の時刻に翻弄されながらバタバタと過ごしているとすっかり陽も短くなり夕方には真っ暗なここMertzwillerです。
ヨーロッパの冬は暗く厳しいと聞いていた通り、あの夏の強い日差しはどこへ行ってしまったのかという程のどんより曇り空がいつまでも続いています。
朝方この世界一面を覆う濃霧の中に、もう何年も前に観たロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテイン監督の“霧の中のハリネズミ”を思い出しました。
あぁ、あれは本当にこんな霧の中にあるのだなとなんだか感慨深い思いで『おおおぉーい、ハリネズミくーーーーん』と心の中で呼びかけてしまいます。

そうこうしていると、あっという間に賑やかなNöelの足音がやってきました。
アルザス最大の町Strasbourgはクリスマスツリー発祥の地だそうで、大きな大きなツリーもこの時期飾られています。
クリスマスマーケットではヴァンショー片手に皆どこかほくほくと楽しそうで、食べ物はサンドイッチやタルトフランベ、シュークルートといったおなじみのものばかりでも冷たい空気の中でもくもくと立ち上がる湯気を見ると嬉しくなってきます。
もちろんNöelのためのアルザス特産のお菓子も多々あります。
どちらかと言うと、ごくごく素朴なものやアルコールがきいたドライフルーツたっぷりの大人のための焼き菓子が多いように思います。
クリスマスマーケットの中で、歩けど歩けどエッチラオッチラおしくらまんじゅうされながら進まない足取りに、『はて、なんだか前にもこんなことあったような…』と思いをはせてみると思い出しました。
それはたーくさんの人の波とぱちぱち弾けるような声の中、景色は違えど日本の年の瀬と同じあのそわそわ、わくわくした空気です。あのせわしくもどこか懐かしい賑やかさは、色んなことがあった1年をもうすぐ終え新しい良き年を迎えるぞという心持ちの表れなのかもしれません。
さーて、今年もあと1ヶ月のカウントダウンを切りました。キラキラしたNöelの空気をいっぱい吸い込んでもうちょっとだけ楽しい時間を満喫したいと思います。